「香害」という言葉を聞いたことがありますか?
アロマブームの近年は、「香りがあればあるほどいい!」みたいな流れになっているように感じるこの頃ですが、その「香り」の物質のせいで体調不良を招き苦しんでいる人も増えているのです。香りは本来、人を心地よくするもののはずがこのままでは香り嫌いの人が増えてしまう。また、間違った香り選びに慣れてしまって人本来の力が閉ざされてしまう。これは本当に問題です。

そこで医療者でもあり天然香料を扱う私の視点から、この「香害」についてまとめてみたいと思います。

「香害とは」

香りに含まれる化学物質によってめまいや吐き気、思考力の低下などの体調不良を引き起こすことをそう呼んでいます。化学物質過敏症という病名の一つです。一昔前によく聞いたシックハウス症候群もこれに当てはまります。なんとなくイメージがつきますでしょうか。一度きっかけとなる物質で症状を起こすとそれ以外の化学物質にも過敏に反応を起こしてしまうという厄介な病気です。

「アレルギーとの違いは?」

微量なもので症状を起こすという点ではアレルギーと似ていますが、そのメカニズムが違うようです。アレルギーはその原因となる「アレルゲン」に反応してそれに対してのみ症状が出る。化学物質過敏症は、その物質が入ると自律神経に作用し体調に不具合を起こす、と言われています。しかしこのあたりはまだ研究中でわからないことも多いようです。

「香害、化学物質過敏症の症状」

多くは、吐き気、めまい、思考力の低下。ほかの化学物質過敏症では、視力低下、咳やくしゃみ、脈が速くなる、蕁麻疹、肩こり、のぼせ、頭痛・・・・など様々な症状があるようです。なにかひとつの化学物質に反応したことをきっかけに、これらの症状が出る可能性があります。これで困ることは、その症状が何かの病気だと診断されて適さない薬を処方されてしまうことも例外ではないということ。健康を広く脅かす原因となります。

これらはこちらのサイトを参考にさせていただきました
「化学物質過敏症支援センター」
http://www.cssc.jp/cs.html

「実は香害に苦しんでいる人は半数以上?!」

ある会社のアンケートで「人工的な香りで体調不良を起こしたことはあるか」の結果、なんと半数以上があると答えたそうです。香りのある環境が辛くて会社を休んだり、学校に行けなくなるケースもあります。
参考にさせていただいた会社さんのページをリンクしておきます

「シャボン玉せっけん」
https://www.shabon.com/kougai/

「香害の予防をするには」

まず、香害に苦しんでいない方も、もしかしたら今後化学物質過敏症が発症する可能性があります。化学物質の入っているものはできるだけ使わない生活にシフトしましょう。そして、香害で苦しんでいる人のために、科学的な香りは極力控えるようにしてあげてください。香水は付けていないとしても、世にあるそういった商品のおそらく9割は化学の香りが付いています。代表的なものは柔軟剤。そしてシャンプーや整髪料。これらを香りのないものにしてもらうだけで周りの人はとても助かるのです。
最近は「アロマ入り」とか「精油入り」と書いているものも多いのですが、あれらのほとんどは 精油も入っているのかもしれませんが、化学物質も入っているでしょう。香りの鑑別は難しいかもしれませんが、香りがなかなか消えない時点でおそらく余計なものが入っています。

「アロマの香りはどうなの?」

じゃあすべて無香料、というのがいいのでしょうけれど。自然のものには香り、匂いがついています。中には臭いものもありますが、天然の香りであることには違いありません。

アロマテラピーに使うアロマ、正しくは精油と言います。精油は植物を蒸留したり圧搾したりして採取した天然のものです。市場に出回っているものはそれが商品として価値あるものと認められたものだけ出回っています。なかには野菜と同じように規格外のものもあるんです。精油のブランドにより香りに微妙な違いがあるのは、その植物が採れた産地やその年の気候条件などで植物の出来の具合が左右されるからです。

そしてそのアロマは香害とは無縁か、といえば 私の意見としては100%大丈夫とは言い切れないという回答です。なぜなら、化学物質過敏症にはその機序から該当しませんが、香りの好みは体質によって非常に個人差があるからです。例えばラベンダー。世の広告が「ラベンダーはいい香り」と言ってしまっているので 多くの人がラベンダーはいい香り、としてくれていますが 私のお客様の3分の1は「実は苦手」とおっしゃいます。こういう話がありました。あるエステサロンで施術の最後に「ではリラックスのためのアイマスクをおきますね」と言ってお休み中のその方の目の上にそれを置いてくれたそうです。しかしその方はラベンダーの匂いが苦手。それまでのいい気持ちがいっぺんに吹っ飛んでしまったと残念なお話をしてくださいました。
そうした香りによってそれが化学物質でなくても「苦痛を与えるかもしれない」点では、香害になることもあるなと思います。
しかし柔軟剤などとの決定的な違いは、天然香料の精油の場合は 香りがいつまでも残ることがないこと。香りは本来時間とともに消えるものです。その点では人工的な香りよりも使い易いのではないかと思います。

「どうしても香りを、というときは自然の香りを使う」

香害で苦しむ人がいるのがわかったので使いたくないけど、でも自分の気分の高揚のために香りを使いたい、と 香りのある生活をしてきた方は思うと思います。そこで、アロマ香水やアロマミストの出番です。
ミストと香水の違いはその香り成分の濃度によります。選ぶ精油によって同じ濃度でも香りの強さは違ってきます。また、1つの精油よりも3種類以上組み合わせると香りのイメージにも個性が出てきます。

市販の柔軟剤や香水は、もしかしたら誰かの家と同じ香り。自分だけの香りにこだわりたいならば自分で調香できるアロマ香水がオススメです。天然の香りに慣れると体も心持ちも変わってきます。自然の香りを室内に、という点では生ハーブを植えておくのもオススメです。

最後は私の宣伝になってしまい申し訳ありません。(そのつもりはなかったのですが) 香りは閉じ込めようのないとても扱いにくいものです。ぜひ、害とならない香りの使い方をしていきましょう。