やっと涼しくなり、正常に感覚が戻りつつある気がします。
暑すぎると頭が朦朧として、微妙な感覚が失われるというか、
まあとりあえずいいか、な感じになりがち・・・ 私だけかもしれませんが。

  
  

香りは注目されている?

私が注目しているせいもあるとはもうけれど、なにかと「香り」というキーワードを聞く。
コロナ禍でいろいろな仕組みや嗜好などが変わり、
見えるものから見えないものへ興味がシフトしたのだろうか。
あるいは、見える情報だけでは もう限界がきているからだろうか。

  
  
  

  
  
  

香りは本能で感じる

五感という言葉を聞いたことがあるでしょう。「見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる」の5つの感覚のこと。
これらのほとんどは、それぞれの感覚器を通して大脳へ情報が渡るのだけど、
嗅覚と味覚は、先に本能の部分を通る。そして、味覚には必ず嗅覚が関連する。
嗅覚はそもそも、生きるために必要な部分。危険の察知や自分の味方の匂いを嗅ぎ分けるためにある。
人間は動物のように何かに食われることは事故以外にないけれど
赤ちゃんが生まれてすぐにお母さんの母乳のありかにたどり着けるには、この嗅覚のおかげだそうだ。
そして、オスとメスが引き合うときにも、自分にあった匂いをかぎ分けているという説もある。
人間でいえば男性と女性のフェロモン。フェロモンの匂いなどわからないが、自分ではわからない部分で
相性の良し悪しを自然とかぎ分けているらしい。人間も動物なのだ。

でも、この動物的な感覚は、あらゆる化学の産物によって衰えさせられてしまっている。
たとえば、合成香料、マイクロカプセル。

  
  

合成香料がベースでは、個性が発揮できない

よくアロマ好きな人からは「アンチ合成香料!」のようなお話を聞く。
私もどちらかといえばアンチかもしれないが、そういうつもりはなく、ただ、全般的に合成香料の商品の匂いで
具合が悪くなるので苦手というだけ。 合成だから悪い、というわけではない。
合成でも大丈夫なものもある。
いろいろな話によると、合成香料、特に香水のよく使われる 合成のムスクが苦手という人は多いそうだ。
表現しがたいけれど、嗅ぐとすぐわかる、頭頂部にツンとくる匂い。あれが苦手なのだ。
申し訳ないけれど。

そして、香水よりも多いのはここのところ話題の柔軟剤。むかしは控えめなグリーン系とかフローラル系だったので
まだ反応しなかったけれど、香水風にどんどんエスカレートしてきたモワッとする香り。
もちろん苦手で、電車でそんな香り付きの人が隣に座った時には、私は半分息を止めている。困ったことに、
その香りは衣類や紙製のものにすぐにくっついてしまう。
出勤前だとその香りで登場することになり「あら、めずらしいですね」と言われることもあるくらい。
もちろん私にとって本望ではない。正直なことを言えば残念な状態で1日がスタートする。

一方不思議なのは、
ファッションに気を使う人は多いが、香りへの気遣いが意外に少ないこと。
香りの方が、そこに存在するだけで広がるし、気づいてしまう。
ファッションは見られなければ認識されない。
香りは揮発して漂い、そこに印象まで残す。
せっかくならばそれを利点として、「自分の香り」をアピールすることに使ったらいいのにと思う。

たとえば決まった香りの整髪料や柔軟剤があなたの香りのベースとなってしまう、ということである。
そこに香りを重ねていくのはむずかしい。ともすれば悪臭になりかねない。

  
  


  
  
  

香りは消える。だから着替えられる

うちでも精油の香料だけを使った香水の相談を受けている。多い質問の中にやはり、
「香りを続けられる方法はないですか?」 というのは多い。
好きなものは長く、という気持ち。とてもわかります。
でも、きっといつまでも続くとそれは、好きではないものになったり
当たり前すぎて好きでも嫌いでもないものへ変わる。

香りは本来、揮発をする性質があるので 種類によっての差はあるけれどいずれも消えるもの。
消えてしまう花火を美しいと思うように、
散りゆく桜に美学を思うように、
香りも消えて印象を残すことが魅力の一つであるとも思う。
 

音ならば余韻、光なら残像。
香りは残り香。

消えるからこそ、それを記憶にとどめたくなる。
一瞬の勝負である。
そこが、いい。
  
  
人の気分は変わる。香りもそれに合わせて着替えることができる。
いつもはナチュラルだけど、今日はちょっとエレガントな雰囲気で過ごしたい、とか
今日はバーに行くから、ちょっとハイヒールが似合うような雰囲気を出したい、とか。
そういう時に、香りはとても使える。

さらに精油であれば、そんな気分づくりに脳も勝手に作用して
内側からもその雰囲気を醸し出してくれる。
つけた時より香り自体は薄れていても、
精油があなたにもたらした働きは、しばらくの間持続する。

  

  
体にいいか悪いか、ということだけでなく、
こんな視点からも わたしは
もっと身近に天然香料を楽しむ文化が広がってほしいと願う。

  
 
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